結晶系を考えるときの平行六面体は「形の良さ」を優先していて、
最小の繰り返しの単位とは限らない。
よって、平行六面体の頂点が形成する格子と
Bravais格子は、いつも同じとは限らない。
周期性を満たしながら平行六面体の頂点以外に点を加える方法として以下の3通りがある。
Bravais格子には何通りあるのだろうか。
7つの晶系とも、平行六面体の頂点以外に点がないタイプ(単純格子)がある。
つまり、単純格子が7種類ある。
hexagonalは、単位胞が「正三角柱」2つ分ということで
特別扱いされている。正三角形でなくなれば、monoclinicとなる。
hexagonalの単位胞となる平行六面体の中心、あるいは各面の中心に点を置くと、
正三角形の特殊性が壊れてしまう。
よって、hexagonalでは単純格子だけ考えればよい。
(なお、hexagonalの単位胞のなかに、うまく2つ点を加えることで、新たなBravais格子を作ることができるが、それはrhombohedralと同じであることが示される。)
triclinicはもともと形が悪いので、六面体の中心や面の中心に新たに点を置くくらいなら、
そうならないように平行六面体を取りなおせばよい。
すなわち、これも単純格子だけである。
その他の5つの結晶系について、以下、考える。
cubic, tetragonal, orthorhombic, monoclinicの場合には、
体心格子は、同じ結晶系の単純格子で表しなおすことはできない。
一方、
菱面体の中央に点を置いたものは、別の菱面体を取りなおせば、
その単純な繰り返しで表される。
monoclinicの場合は、基本並進ベクトルを取り換えると、底心のmonoclinic格子になる。
底心を使う決まりになっている。
cubic, orthorhombicの場合には、
これまでに述べてきたどの格子とも別の種類の格子が作られる。
tetragonalの場合は、正方形をつくる二つの基本格子ベクトルを取り直すと
体心のtetragonalと同じになる。
同じtetragonalに属し、しかも体心tetragonalのほうが平行六面体が半分の体積なので、
そちらで表すことにする。
monoclinicの場合も、半分の体積の体心monoclinicに書きなおせる。それをさらに底心に書きなおすことになる。
菱面体の各面の中心に点を置いたものは、別の菱面体をとりなおして、単純格子に取ることが可能である。
cubicは、全部の面が同じという特殊性が要求されている。底心格子は、6つの面のうち2つの面だけ中心に新しい格子点が作られるので、cubicとは相いれない。
tetragonalでは、正方形の面の中央に点を置いたものは、格子を取り直して単純格子にできる。また、4つの長方形は同じでなくてはならないので、その2つにだけ中心に格子点を入れるわけにはいかない。
菱面体は6面とも同じひし形という条件が必要なので、底心格子とは相いれない。
結局、orthorhombicとmonoclinicの場合にのみ、底心格子を新しく導入する必要がある。
ただし、monoclinicの場合には、長方形の面の中央に点を置いた場合にのみ新しいBravais格子となる。
六方晶系と、三方晶系のうち菱面体格子でないものが、 共通の格子を持つことに注意しておく。
結晶点群では次の対称要素を考えていた。
ある軸についての回転と 軸に平行な方向の並進操作の組み合わせをらせん操作と呼ぶ。 らせん操作は二つの整数nとqを用いて、nqと表記される。 これは、360/n度の回転と、基本格子ベクトルのq/nの並進の組み合わせを意味する。
ある面についての鏡映とその面に平行な方向の並進操作の組み合わせを映進操作と呼ぶ。
映進操作は、鏡映後の並進操作によって、次のように分類される。
3次元の空間群は230通りあり、「International Tables for Crystallography A」に掲載されている。
ここでは、空間群の表記法の決まりについて述べる。
その後に、回転、回反、らせん、鏡映、映進が続く。
複数方向の回転軸、回反軸、らせん軸、及び、鏡映面、映進面がある場合は、
軸あるいは、面の方線の方向に注目し、それを、結晶系ごとに決まった記載順序で並べる。
回転軸やらせん軸に垂直な鏡映や映進がある場合は、先に回転操作やらせん操作を書き、そのあとにスラッシュ(/)を書いて、そのあとに鏡映や映進操作を書く。
例えば、21/c
とあれば、180度らせん軸と、それに垂直なc-glide面の存在を示す。
回転軸やらせん軸の方向を、基本格子ベクトルを用いて表す。 [hkl]軸というのは、 ha+kb+lc と平行な軸のことである。
結晶学では軸や面を表すために、Miller指数を用いる. 次の4種類の指数が使われる。
ここで、整数が負となる場合は、しばしば、数字の上に線をつけてあらわす。例えば、(1 1 0)は (1 − 1 0)という意味である。
<100>方向、<111>方向、<110>方向の順に対称操作を記載する。 空間反転がある場合は、 3回軸のところで3 と書く。
[001]方向、<100>方向、<110>方向の順に対称操作を記載する。 空間反転があれば、[001]方向の4回回転軸か4回らせん軸と それに垂直な鏡映あるいは映進面が存在するので、 特に、空間反転を表す記号は不要である。
[100]方向、[010]方向、[001]方向の順に対称操作を記載する。 空間反転があれば、3方向とも鏡映あるいは映進面が存在するので、 特に、空間反転を表す記号は不要である。
[001]方向、<110>方向、<110>方向の 順に対称操作を記載する。 空間反転は次のように記載する。 6回回転か6回らせん軸があり、空間反転もある場合は、 c軸に垂直な鏡映あるいは映進面が存在するので、 特に、空間反転を表す記号は不要である。 6回回転も6回らせん軸もない場合は、空間反転があれば、3回軸のところで 3 と書く。
hexagonalの格子を用いて、 [001]方向、<110>方向の順に対称操作を記載する。 空間反転がある場合は、 3回軸のところで3 と書く。
対称操作のある軸をb軸とするのが一般的。 空間反転がある場合は、[010]方向の2回回転軸か2回らせん軸と それに垂直な鏡映あるいは映進面が存在するので、 特に、空間反転を表す記号は不要である。
空間反転がある場合はP1 、ない場合はP1と書く。
物質系専攻 有馬孝尚