・ 軌道自由度
研究紹介

人工ガーネットには磁気秩序を示すものが存在します。上で紹介したYIGはその代表でありフェリ磁性という磁性を示します。強磁性は磁性イオンのスピンが一様に揃う磁性です。このとき磁性イオンのスピン間には交換相互作用と呼ばれる量子的な相互作用が働いており、このためにスピンが秩序を持って一方向に揃い、強い磁化を示します。一方で、スピン(磁気モーメント)が反並行に秩序だつ場合も存在します。このような場合、スピン間にはスピンを反対に揃えようとする反強磁性相互作用が働いています。スピン反平行なのでこのままだと磁化しませんが、下図のように磁気モーメントの大きさが異なっていれば磁化します。このような磁性がフェリ磁性です。

この図からわかるように、Mn3+のeg電子は1つなので、この電子には二重縮退したeg軌道(3z2-r2 , x2-y2)の
どちらかの軌道を占有する自由度が存在します。これを軌道の自由度と呼びます。Fe3+の場合は全ての軌道が占有されているので軌道の自由度はありません。軌道の自由度が存在するイオンを含んだ結晶では低温になった場合、系のエネルギーを下げるため縮退を解きます。高温で立方晶などの対称性が高い結晶構造が自発的に歪み、正方晶や斜方晶などの対称性が低い結晶構造に相転移します。このような格子の自発歪みが起こる現象をJahn-Teller効果といいます。軌道の自由度を持つ電子はJahn-Teller効果の結果で生じた最低準位の軌道を占有します。このとき、軌道が整列する軌道整列現象が起きます。

ガーネット構造におけるスピン・格子相互作用

ガーネット構造は組成式{C}3[A]2[B]3O12で表され、空間群はIa3dで立方晶系に属します。C、A、B、サイトに入る陽イオンの周りには、それぞれ酸素がCサイトでは12面体配位、Aサイトでは8面体配位、そしてBサイトでは4面体配位で配置しています。下図はガーネット構造の単位胞を[111]方向から見たものです。Aサイトの8面体、Bサイトの4面体が確認できます。

・ 研究目的

学生のほとんどは外部からの進学者です(私もそうです)。それでも、先生・学生みんなで食事に行ったり、テニス
をしたり・・・etc、みんなとの距離が近い研究室です。個人ごとに研究テーマを持つことができ、各々研究に打ち込ん
でいます。テーマは人によって異なりますが、問題があったときはみんなで協力して解決策を考えることもあります。
もちろん研究中心の生活ですが、夏には研究室旅行、秋には芋煮などの行事もあります!

図:フェリ磁性の磁気秩序

キーワード : 磁場による軌道整列の制御
・ ガーネット構造

ガーネットと聞くと多くの人は宝石のことを思い浮かべるだろうと思います。しかし宝石のガーネットの他に人工ガーネットと呼ばれるものがあります。この代表的なものとしてはイットリウム鉄ガーネット(Y3Fe5O12、略称YIG)、イットリウムアルミニウムガーネット(Y3Al5O12、略称YAG)があります。YIGはマイクロ波の回路素子や、磁気バブルメモリ、さらに大きなファラデー効果を有するため光アイソレーターとして主に研究がなされています。YAGはレーザー素子として用いられています。

Jahn-Teller効果が起きると結晶構造が相転移し、結晶全体が歪みます。結晶が磁性を有していれば、外部からの
印加磁場を掛けたとき、スピン・軌道相互作用により軌道整列が生じ、Jahn-Teller効果を引き起こして結晶が大きく
歪むことになります。この逆を考えると、結晶を歪ませると磁性が生じるということになります。このような現象はスピンと
軌道が強く結びついている物質で生じ、スピネル化合物、ペロブスカイトMn酸化物で研究が行われています。
そこで、軌道の自由度をもつガーネットを実際に作製し、磁場によって軌道整列を制御し、結晶の巨大な歪みを
発生させるというのが本研究の目的です。

・ フェリ磁性
・ ガーネット構造
・ 有馬研はこんなところ

遷移金属八面体サイト中では五重縮退している遷移金属の3d軌道は周囲に配位した酸素の結晶場により、二重縮退したeg軌道と三重縮退したt2g軌道に分裂します。下図はMn3+とFe3+の電子配置を示したものです。

t2g軌道

t2g軌道

eg軌道

eg軌道

図:Mn3+の電子配置(左)、Fe3+の電子配置(右)