○ 物質に電場をかけると電気分極が生じ、磁場をかけると磁化が生じます。この電場→分極、磁場→磁化という関係を変えた、電場→磁化や磁場→分極という効果の存在が20世紀中頃から知られています。これを電気磁気(ME)効果といいます。下に模式図を書いています。詳しい事は谷口、阿部さんのページにあります。
○ ME効果を示す物質に光を入射すると不思議なことが起こります。先ほど図で書いた物質に光を入射するのですが、このとき光を紙面の表から入れる場合と裏から入れる場合の2通りを考えます。
○ ここで注意したいのは光における電場と磁場の方向です。光の電場と磁場の外積は入射光方向に対して決まっています。つまり左右の図において、電場と磁場の外積の方向が反転しています。
○ 上に書いたことに注意して下の図をみると、それぞれについて光における電場、磁場の関係と物質における分極(電場)、磁場の関係が逆転しています。左の図では光のEとHの方向が物質のPとHの方向と同じですが、右の図ではそうなっていません。つまり表と裏は、光のEとHの方向と物質のPとHの方向の関係が同じか違うかということを意味しています。
○ 上の図は、ME効果を示す物質では、それの表と裏で光学的性質が異なることを示しています。ここで磁場の向きを反転させます(下の図)。すると上の図でみられた光におけるEとHの関係と、物質のPとHの関係が下の図では逆転しています。先ほど、光のEとHの方向が物質のPとHの方向と同じものを表、違うものを裏としました。従って、下の図では今までの表と裏が反転したことを意味します。
○方向二色性はこれまでにいくつかの物質で観測されてきましたが、どれもその効果は小さいものでした。しかし、私たちは、これまでと比較して約1000倍大きい方向二色性を示す物質を発見しました。
○ 光を表から入射した場合と裏から入射した場合について、その物質をCCDカメラで撮影したものを以下に示します。先に書いたように、物質の表裏は外部磁場の印加方向によって変化させます。2つの写真において、明るさが大きく違うことが分かります(物質の吸収率が変化)。方向二色性を視覚化したものはこれが初めてです。以上についてまとめると、物質へ印加する磁場方向の反転、別の言い方をすると、物質の表裏で見え方が写真のように変わるのです。
○ 以上のように方向二色性はとても興味ある現象ですが、それを示すと報告されている物質は多くありませんし、この現象自体、未だ多くの謎を残していると言えます。そのため研究は、方向二色性を示すと考えられる物質を作製するところから始まります。
○ 試料を作製した後は、磁化などを測定し、光がある程度透過するような薄さにします。そして、実際に下に示したような装置を使って方向二色性を測定します。
有馬研の特色
○研究はそれぞれの人が別々のテーマを行っていますので、自分のテーマを持ちたいと考えている人にはよいところだと思います。テーマは別でも、研究や実験の話はよくみんなでします。
○ひとつの研究室としては、いろいろな分野の研究をしていると思います。(基本的には磁性ですが)そのため、実際、研究室に配属された後にでも、自分の行いたいことを決めることができます。
○実験は研究室の他に強磁場センター、KEK、Spring-8などで行ったりもします。
○研究室の行事として、テニスや研究室旅行(研究室行事参照)など他の研究室ではあまりみられないものもあります。
非反転対称磁性体における方向二色性の研究
齋藤 石川