(3年生&大学院進学希望者向け)
Fig2. ペロブスカイト型Mn酸化物
アルカリ金属を代表として金属中の電子は自由電子モデルで比較的よく記述される。しかし、遷移金属や希土類金属の化合物では、固体中の多数の電子が互いに強い相互作用を及ぼしあいながら存在している。強相関電子系とはこのようにお互いに強い影響を及ぼしあいながら存在している電子集団であり、電子の持つ電荷、スピン、軌道という3つの内部自由度が結晶の中で複雑に絡み合い、凌ぎをけずりあって、非常に興味深い物性を見せる。その代表が高温超伝導や超巨大磁気抵抗効果として知られている。これら強相関電子系は、温度変化は元より、電場、磁場、応力、光といった外部からの刺激に対しても大きな応答を返す為、現在、物性面、応用面で盛んに研究されている。
私は強相関電子系の示す物性のうち、特に磁気抵抗効果を対象と研究を行っている。磁気抵抗効果とは磁場を印加すると抵抗が大きく変化する現象で、特にその変化の大きいもの巨大磁気抵抗効果(GMR)と呼ぶ。また、強相関電子系において電荷軌道整列状態(電子が隣に動きにくい)から強磁性状態(電子が隣に動きやすい)への転移に伴う非常に大きな磁気抵抗効果が発見され、そのオーダーが従来のものに比べ非常に大きいことから超巨大磁気抵抗効果(CMR)と呼ばれている。簡単に言うのなら「絶縁体が磁場をかけると導体になる現象」といったイメージを持てばわかり易いと思う。
磁気抵抗効果を示す、ペロブスカイト型Mn酸化物を研究対象としている。
ペロブスカイト型Mn酸化物はAMnO3という組成式で表され、Aが作る立方体内にMnを6つのOイオンが取り囲んだMnO6八面体を埋め込んだ構造をとる。Aに入る原子によりMnイオンの電荷も決まる。この系ではMnの電荷、そのスピンの向き、軌道の形の秩序が重要であり、大きく物性に影響を与える。
Mnは原子番号25番で電子配置は(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(3d)5(4s)2である。ペロブスカイトMn酸化物中のMnは、Mn3+かMn4+の状態で存在し、電子配置はそれぞれ(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(3d)4、(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(3d)3である。(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6はArの電子配置なので、Mn3+が[Ar]+(3d)4、Mn4+が[Ar]+(3d)3と考えればわかりやすい。次に3d軌道を考えよう。3d軌道の準位は5重に縮退しており、それぞれの準位にUpSpinとDownSpinの電子が1つずつ入ることができるので、3d軌道全体で最大10個までの電子が収容できる。しかし、ペロブスカイトMn酸化物中のMnは、6つのOイオンに取り囲まれた状態で存在しているため3d軌道がこの結晶場による影響を受け、2重に縮退したeg軌道と3重に縮退したt2g軌道に分かれる。フントの規則に従い同じスピン方向に下の準位から電子を詰めていくと、Mn4+の3つの3d電子はt2g軌道(xy、yz、zx)に入る。Mn3+は4つの3d電子があるため、3つはt2g軌道に入るが、残りの1つがeg軌道のどちらの状態をとるかについては自由度が残る。
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有馬研は2004年に東北大学に移ってきたばかりの研究室です。強相関電子系の研究で作製から測定までやっています。現在、実験室の設備を整えたり新しい装置の立ち上げなどの研究環境整備を進めながら研究活動を行っておりますが、最近はかなり進んできて快適な環境になってきました。年度末はに装置が勢ぞろいする予定なので楽しみです。
yz
zx
xy
3z2-r2
x2-y2
Fig3. 3d軌道の結晶場分裂
Fig1. 強相関電子系
有馬研の特徴はやはり先生と学生の距離が非常に近いことだと思います。先生が近い存在ということは学生にとって非常によい環境だと思います。私もよく先生に質問をしています。
研究テーマはチームで行っていくのではなく、一人一人が自分のテーマを持ち(4年生もです)、自分でスケジュールを組みながら実験を進めていきます。勿論、人手の関係などでメンバーに協力をお願いすることもよくあります。各自のテーマと言えども、ミーティングやゼミにおいて個人のテーマが話題に上がってきますので議論や共有もあり、同じ研究室なので専門知識や実験技術には共通したものが多く、メンバーに相談や質問というのもよくあります。
今までMnの3d電子について述べてきた。ペロブスカイト型Mn酸化物において電気伝導や磁性の鍵を握っているのはこの3d電子であり、まさにこの系の主役である。電子が飛び移るとすればエネルギーの高いeg電子であるが、先ほど述べたように3d電子は1つの原子内では同じスピン方向で存在する。このことから考えると、右図上のように、eg電子が今いる原子のスピンの向きと飛び移りたい原子のスピンの向きが同じあれば電子の飛び移りは容易である。一方右図下のように、今いる原子のスピンの向きと飛び移りたい原子のスピンの向きが違えば電子の飛び移りは困難ということになる。まとめると、Mnのスピンの向きが揃っているときは電気伝導性がよく、Mnのスピンの方向が反対またはバラバラの時はあまりよくないということになる。そこでスピンの向きが反対またはバラバラの状態に、外部から磁場を印加してMnのスピンの向きを揃えてやると一機に電子の飛び移りが容易になり、大きな磁気抵抗効果が発現する。
Fig4. eg電子の飛び移り
Mn4+
Mn3+
Mn4+
Mn3+